ストックの社会保障は世の中を救うのか?② ー 200年持たない200年住宅
前回の記事で取り上げた、
というアイデアの検証を行っていきたいと思います。
まず、
民間の賃貸住宅の家賃がなぜ高いかというと、二〇〜三〇年ぐらいで建設費を回収できるように家賃を設定するからです。なぜ二〇〜三〇年かというと、民間の信用力では銀行融資は、最長でも三〇年程度だからです。しかし、国や地方自治体は、二〇〇年間の借金をすることも可能です。そして耐用年数が二〇〇年で、なおかつ維持補修費は、他の集合住宅とさほど変わらない住宅を建てる技術は、すでにできています。
この中で、
耐用年数が二〇〇年で、なおかつ維持補修費は、他の集合住宅とさほど変わらない住宅を建てる技術は、すでにできています。
について取り上げます。
☆200年住宅のその後
福田内閣において、政策の目玉として「200年住宅」という言葉が出てきました。
その後、長期優良住宅という名称に代わり、
平成20年には普及のための法律が制定されています。
http://www.mlit.go.jp/common/001089279.pdf
この制度の発想の根底にあるのは、
日本の住宅が
アメリカなどと比べて相当短い30年程度で
建てては壊してを繰り返しており、
その結果として、
1年当たりの建築費負担や解体コストが高くなっている、
というものです。
<引用元>
平成20年度国土交通白書 2 住宅に関する現状と課題
このような長寿命化の必要性を踏まえて、
そうした長寿命化ができるのかという点についてはどうでしょうか。
住宅生産団体連合会という団体のHPを見てみると、
高強度・高耐久の100年コンクリートや免震工法、制震壁、地盤改良技術など、住宅の長寿命化への取り組みがなされています。
また、中高層・超高層住宅については、超高強度コンクリートを使用した高耐震スケルトンシステムが開発されており、その多くはSI対応となっています。また、行政との連携による革新的構造材料を用いた新構造システム建築物の研究開発プロジェクト(平成16年度~平成20年度)において200年耐用を目指した超耐震建築システムの技術開発が進められています。
というように確かに200年耐用に向けた技術的シーズはあるようです。
一方で、
200年住宅が話題になった時期の報道を見ていると、
福田会長は「200年というのはシンボルであり科学的な根拠はない。旗を振っている段階であり、具体的なことはこれからである。今年の夏の概算要求にどれだけ入れられるかである。資源の節約とまちの景観を守るということからすると200年住宅は実現しなくてはならない」との決意を話している。
と書かれているように、
200年という言葉のスローガン的な意味合いが見て取れます。
また、
構造部分の金物や合板については、200年持つとは考えられません。
金属部分の腐食や結露による木部の腐敗、合板の接着剤の耐久性など、200年持つのは至難の技です。この部分を交換すると相当な大工事になります。
もし構造部分に交換が必要なら、200年住宅と呼ぶには大きな疑問があります。基礎コンクリートの中性化を考えると、標準的には50年程度の耐用年数です。
(これは鉄筋コンクリート構造の公な耐用年数を考えてもらえば理解できます。)
基礎を作り変えることが必要ならば、とんでもない大工事となり、とても200年住宅とは呼べないでしょう。
200年コンクリートも作られてはいますが、まだ現実には実証されていない技術ですし、酸性雨などを考えると微妙な印象です。
というような指摘も見られます。
ここで、
税制面での優遇などを受けるために
長期優良住宅として受けるための基準を見てみると、
数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること。
として、
劣化対策等級3相当、「構造矩体が3世代(75~90年)もつ程度の対策」
が定められています。
したがって、
制度的には200年、というより100年を前提にしていると考えられ、
耐用年数が二〇〇年で、なおかつ維持補修費は、他の集合住宅とさほど変わらない住宅を建てる技術は、すでにできています。
とまで言い切れるほどには至っていないのではないでしょうか。
(これを読まれている方で、
技術的に既にできているという話があれば教えてください。)
というわけで、
公営賃貸住宅の議論をする場合でも、200年というよりは、100年程度を射程にするのが現実的であると考えます。