地元に企業誘致しても若者が戻ってこない理由
☆スーツを着たい学生と製造ラインに立ってもらいたい企業
最近とある自治体の方とお話をする機会がありました。
その中で、
「うちの街の出身者はだいたい県外に進学して、
帰ってきたいと思っている学生もそこそこいるんだけれど、
みんな『地元には仕事がない』といって帰ってこないんだ。
だから企業誘致をしっかりがんばって雇用をつくっていかないと」
というような話をされていました。
自治体の方は企業誘致などを一生懸命がんばっておられるんでしょうけれど、
学生の求める雇用と、
企業誘致を通じて自治体が確保したい雇用に
なんとなくミスマッチがあるようにササヤマンには思えるのです。
自治体が「企業誘致」という形で地元にもってくるのは
どちらかというと工場などがメイン。
一方で就活ランキングなど見ていると
学生が(周りの雰囲気に流されつつですが)求めている雇用は
いわゆるスーツを着る職業。
スーツを着て働きたい学生に、
うちの製造ラインには仕事がいっぱいあります、
といってもあまり人が集まらないんだろうなあと思うわけです。
☆ギャップをどのように埋めていくのか
就活ランキングの学生の希望を見ていると、
「なんだか就活マーケットに毒されてるなあ」と思うわけです。
みんなどんだけ一流企業(と呼ばれているところ)に入りたいんだと。
一度、ちきりん氏のブログでも読んでほしいところです。
都市部で一般的な就活をすれば、私の方が相当に有利です。
なぜなら、そういう“市場”では多くの企業が「なんでも手早く理解し、要領よくこなせて話の上手い学生」、いわゆる「コミュニケーション能力の高い学生」を求めているからです。
反対に、手先が器用で細かい仕事を丁寧にこなせても、クチ下手で慎重な性格のため行動がゆっくりめの学生は、「ややトロい?」「積極的じゃない?」みたいに思われてしまう。
能力がないわけじゃないのに合わない市場で就職活動をして苦労し、くだらない「面接の練習」とやらでしゃべる練習をやらされたりとか、間違った方向にプレッシャーを掛けられて疲弊してる人もたくさんいます。
(中略)
私がホントにかわいそうだと思っているのは、ラブリーのような企業に巡り会い、10年も働けば、確実に「世界に通用する技術」が身につけられる(うちの母のような適性をもつ)人が、
都市部の一般的な就職活動という「自分に合わない労働市場」を選んだがために、正当な評価を得られず、挫折感や劣等感に苛まされ、自分の人生に自信を失ってしまう、という状況です。
とはいえ、
なかなか新卒のタイミングでは、
みんなと違う選択を「自分の頭で考えてする」というのは勇気がいることなのかもしれません。
地方から東京の大学に出てきたような人にしてみたら、
「東京の会社に就職せずに、地元に戻る」というのがなんとなくプライドが許さないこと?
なのかもしれません。
(別にたいしたことない話でしょうけれど、当の本人には気になるんでしょうね)
☆新卒より第二新卒の方が雇用のマッチングがしやすい?
この点、
一度社会人経験をしてみれば、
就活時代にかかっていた魔法(あるいは催眠術)はだいぶん解けてきます。
「自分にあわないことをして、
大企業にいようとするよりも、
自分に向いているのであれば、
製造ラインでむしろ働きたい」
そう思ってくれる人も多いと考えます。
ちきりん氏の記事にもありますが、
じつは、学生にはまったく見えていない「自分に必要なフィルター」も、
少し働けば誰でもはっきりと見えるようになります。
特に、最初の就職に「失敗した!」と感じた人は、
入社後すぐにでもその失敗の原因を理解します。
そして、「自分にとって意義のある仕事選びのフィルターはこれだったんだ!」と気がつくのです。
加えて、
「東京で大学出て『東京で就職できなくて』やっぱり地元に帰ってきた」
よりも、
「東京で大学でて東京でも就職したんだけれど、
『自分のやりたいことが見つかったので』やっぱり地元に帰ってきた」
のほうが心理的に一歩を踏み出しやすいと思うわけです。
したがって、
地元に帰ってきてほしい自治体サイドとしては、
県外に進学している学生に地元での就職をPRする以上に、
県外で一旦就職したような若者にPRすることが、
求める人材にアピールできる可能性が高いといえるのではないでしょうか。
☆実家にアピールしよう
ところで、
こうした人材にどうやったらアピールできるのでしょうか。
県外で働いているような地元出身の就職数年目の層が
おそらく毎年(あるいは2年に1回くらい)とっている行動があります。
帰省です。
たとえば、
成人式などに参加した20歳の人については、
実家の住所を役場で把握しているのではないでしょうか。
個人情報の取り扱いは別途考えないといけませんが、
たとえばそういう家庭に正月やお盆にUターンの案内を送ることが考えられます。
あるいは正月やお盆には、
地元の駅やバス乗り場に
「おかえりなさい」と看板でも立てて
Uターンの情報などを提示するなども考えられます。
☆見せ方も大事
企業側の見せ方も大事になってくると思います。
もちろん、
就活マーケットに毒されている学生に無理に迎合する必要はないのですが、
「あなたこっちの仕事のほうが向いてるんじゃない?」
というメッセージをうまく第二新卒層などにアピールしていくべきだと思います。
ターゲットの層が帰省時に一番アクセスしやすいのであれば、
その時期に「就業体験」や「面接」などを行うことも考えられます。
☆まとめ
以上をまとめると、
若者に来てほしい地元自治体や企業の提供する雇用と、
新卒の学生が就きたい雇用にはミスマッチがある。
そのミスマッチの解消には、いろいろ方法は考えられるけれど、
手っ取り早いのは「時間の経過」。
3年くらいして目が覚めた第二新卒がねらい目ではないか?
その層が地元に帰るタイミングは決まっているので
そこで集中的にアピールしては?
ということです。
もう少し上の子育て世代やシニア層など
それぞれのUターンの作戦はあるんでしょうけれど、
第二新卒の層を狙いにいくのは割にありじゃないかと思いました。