ストックの社会保障は世の中を救うのか?①
今回も読書ネタなのですが、
松谷明彦さんの「東京劣化」を読みました。
「人口が減って大変大変」、「地方が消滅しそうで大変大変」という
地方創生花盛りな今の論調に一石を投じる考察です。
ざっくり言ってしまうと、
主張としては
①少子化対策で人口を維持しようとするのは不可能
②そもそも人口の維持を経済成長の手段とするのは間違い
③そもそも人口の維持を財政健全化の手段とするのは間違い
の3点になるんだと思います。
①については、なぜ不可能なのか細かい論証がなされていて、
同じような内容については、ウェブ記事にもまとめられています。
そして①から導き出される筆者のメッセージが何とも示唆に富んでいます。
急速な人口減少と高齢化は、日本人自身が過去にしたことのツケだということが分かります。
そこから学ぶべきことは、
「人口をいじると五〇〜六〇年後に必ずツケが来る」ということです。
それにもかかわらず、政府はまた人口をいじろうとしています。少子化対策です。理由は、そうしないと国力が低下するから、日本経済が縮小するから、財政が破綻するから、年金がパンクするから、です。そんなことのために、子どもを殖やすべきだとするのなら、兵力を増強したいからと、子どもを殖やした軍事政府とどこが違うのでしょう。
少子化対策、というか、子育てをしやすい環境をつくっていくことは、
ササヤマンも(子ども持つ身なこともあり)賛成ですが、
少子化対策による人口増加で、
何らかの現在の困った状況を打破しようとするのは、
害の方が多いという点において、
筆者に対して多いに共感します。
それよりは、如何に人口減少社会でも何とかなる仕組みをつくっていくのか。
その点において、
②③が問題になってくるわけです。
この点、ササヤマンが非常に面白いアイデアだと思ったのが、
③に関連する筆者の主張です。
・・・政府が年金以外に有効な高齢者対策を持たないところに、問題の根源があります。・・・そもそも日本のような特殊な人口構造のもとでは、年金は高齢社会を支えるメインの施策にはなり難いのです。
高齢者の生活コストの中で、圧倒的に大きな割合を占める経費は、住居費です。
・・・ここで、比較的良質で低家賃の、それこそ二〜三万円程度の公共賃貸住宅を大量につくれば、仮に年金水準が大幅に下がったとしても、「高齢者難民」の心配はなくなります。
・・・資金はどうするのか。・・・確かに、建設費は公債で調達、つまり借金しますが、・・・元利とも全額を家賃で返済しますから、財政負担は発生しません。
民間の賃貸住宅の家賃がなぜ高いかというと、二〇〜三〇年ぐらいで建設費を回収できるように家賃を設定するからです。なぜ二〇〜三〇年かというと、民間の信用力では銀行融資は、最長でも三〇年程度だからです。しかし、国や地方自治体は、二〇〇年間の借金をすることも可能です。そして耐用年数が二〇〇年で、なおかつ維持補修費は、他の集合住宅とさほど変わらない住宅を建てる技術は、すでにできています。
どうでしょうか?
ササヤマンの第一印象としては、「ほんまかいな?」というものですが、
年金は世代間のマネーの移動、つまりフローのシステムです。それに対して、公共賃貸住宅はストックを活用したシステムで、高齢者対策を行うものなのです。
というように、
世代間格差が問題になるフローの社会保障以外の方法を
提案している点において、
検討の価値ありだと考えます。
第一印象の「ほんまかいな?」を「いけるかも?」くらいに変えるためにも
今後何回かに分けて、
この提案が実際にできそうなのか考えていきたいと思います。