京丹後市のビジョンはヤバい?
☆人口約6万人の街が40年後には7万5千人になる?
「地方創生」を旗印に、
国と全国の地方自治体がそれぞれ「人口の目標」を設定して、
それに向かって地域活性化や子育て支援を行っていく取り組みがなされています。
その取り組みの戦略の市町村第一号として
京丹後市の総合戦略が先日完成したようです。
京丹後市まち・ひと・しごと創生「人口ビジョン」及び「総合戦略」を策定しました
http://www.city.kyotango.kyoto.jp/shisei/shisei/tihousousei/index.html
いち早く完成させたスピード感はすごいのですが、
その人口の目標値設定を見ていると「おいおい大丈夫か?」と思ってしまいます。
京丹後市の人口ビジョンによると、
現在約6万人の京丹後市は、
「人口対策の効果が十分発現されれば、
2060年、本市は「7万5千人」程度の人口が確保」
されると見込んでいます。
政府が日本全体の人口を自然体で
現在:約1億2000万人
→ 2060年:約8700万人
と見込んでいるのを、
何とかこれからがんばって
現在:約1億2000万人
→ 2060年:約1億人
というように、減少の度合いを食い止めようと考えているわけです。
一方で、国立社会保障・人口問題研究所の分析を基にすると、
京丹後市の人口は自然体で
現在:約5万8千人
→ 2060年:約2万6千人
と見込んでいます。
日本全体で(人口減少対策を取ったうえでも)人口の減少を見込んでいて、
かつ自らの市の人口が放っておけば半減する状況下において、
「人口が約1万5千人増えます」というのはずいぶん野心的な目標に思えます。
☆根拠はあるの?
この人口見込みの根拠となっているのは、
①出生率の向上
②人口流出の抑制
の2つです。
①出生率の向上については、
「国全体の出生率が現在1.39のところを
2040年に2.07にすることを目標としている。
という、国の出生率の向上に乗っかる見込みをしています。(一応青天井にならないようにはしてますが。)
②人口流出の抑制については、
「過去(2000年から2010年)の全国の市の人口を見てみると、
都市近郊のアクセスや生活環境が向上した地域は、
人口増加5%や10%を達成している。
→ 京丹後市も今後交通アクセスの向上やテレワーク環境の整備が
なされるので、
人口移動率が5%ずつ向上することが見込める。」
という、過去の日本全国でうまくいったケースに乗っかる見込みをしています。
①も②も、「国の立てた目標」や「過去のうまくいった場合の数値」を根拠に
していることから、国の目標や過去の経験に
「整合的」な見込みだということもできるでしょう。
しかし、
これからの数十年という人口減少フェーズを見通す時に、
「国が立てた目標」だからというだけ、
「過去にはそれくらいうまくいった例もある」というだけで、
現状よりも大幅に人口が増えるような推計に
果たしてどれだけの人が現実的だと感じてもらえるのでしょうか。
☆夢がありすぎて夢がない
京丹後市の総合戦略は、全国初となることから、
今後多くの自治体がこれを参考にすることが予想されます。
「国の立てた目標」や「過去のうまくいった場合の数値」を根拠にして、
全国から軒並み人口のプラス目標が打ち出されてくるのではないでしょうか。
この手の戦略はコンサルが下請けを受注している場合が多く、
そうしたことも加わって
全国で大量に同じようなものが生産される可能性があります。
そこまで人口増加という夢があると、
リアリティがなさ過ぎて夢がないですよね。
そんな大本営発表のような人口減少対策が今我々に求められているのでしょうか。
京丹後市に悪気はないのでしょうが、
各地で同じような戦略が量産され、
人口減少対策という今後の日本の重要な課題について、
単なる地方へのばらまきと大本営発表の出し合いのようなことにはならないでほしいと願います。