10年もすると篠山市内の小売店の多数は撤退-買い物難民対策は大丈夫か
☆世帯数減少、高齢化のダブルパンチで消費は減少
前回の記事で、
人口減少に伴い、世帯数も将来減少するということを書きました。
世帯数の減少は当然その地域での消費活動を減少させます。
それに加えて、高齢者になり、年金生活になってくることでも
消費活動が減少します。
家計調査統計によれば、
いずれも65歳以上の夫婦世帯における
<食料・家具・被服・娯楽・その他>の1か月の支出は、
16.6万円
であるのに対して、
65歳未満の夫婦世帯では、
19.7万円
となり、
高齢者になることで消費活動が減少していくことが見て取れます。
☆小売業に対する消費は25%減少
そこで、前回の記事で用いたシミュレーションを再度活用し、
2010年から2035年までの
小売業に対する消費支出を推計してみました。(注1)
2010年の値を1として、その後の推移を比率にしてグラフ化してみます。
このように、
2035年には篠山市民の消費は
25%減少することが見込まれます。
言い方を変えれば、
1年間に1%ずつ消費が減少します。
もちろん、
市内の小売業は市外からの観光客からの消費なども取り込んでいますので
小売業の全てにおいてダイレクトに25%の売上減少があるとは限りません。
しかし、食料品などの基礎的な消費については、
あくまで居住している住民の消費が一番ものをいいます。
人口減少と高齢化によって
域内の多くの小売業の売り上げは大きく落ち込むと考えます。
☆損益分岐点突破で、撤退か統廃合か。
TKCが公表している経営指標において、
小売業の黒字企業の平均的な損益分岐点率が示されています。
※損益分岐点率とは、何パーセントの売上までなら
減少しても利益がトントンになるかという目安です。
たとえば、90%なら今の売り上げが90%になっても大丈夫ということ。
コンビニなら97.1%、
各種食料品なら94.1%
男子服なら92.7%
これらは一例ですが、
どのような業種であっても
25%の売上減少になれば赤字化は避けられないでしょう。
仮に1年間1%売上減少のペースとなるのであれば、
10年もすると、多くの小売店の多数が赤字化することになります。
そうした流れの中で、
生き残りをかける企業ならば、
経営の合理化に取り組んでいくでしょうし、
そのなかでは店舗の統廃合なども当然選択肢になると思います。
☆小売店の減少を想定した買い物支援を。
小売店の統廃合等があっても、
車で買い物に行けるのであればさほど問題はありません。
しかし、
篠山市はこれからどんどん高齢者が増加していきます。
車に乗れない人も多く出てくるでしょう。
そうした方々の日々の生活、買い物をどのように支援すればよいのでしょうか。
もちろん全国的には民間企業、行政それぞれで取り組みが進められています。
たとえば、
①公民館など歩いて行ける場所に買い物拠点を設ける
「小さな拠点」形成事業
②運送会社と自治体・ボランティア等の協働で、
持続可能な形で無理なく物資を個人に届けるシステムを維持する取り組み
http://www.mlit.go.jp/common/001086333.pdf
③コンビニ側でも配送を手がける動きがあります
篠山市においては買い物難民問題がより先鋭化した形で生じると見込まれます。
上記のような他のエリアでの取り組みの成果を待つだけでなく、
篠山発で主体的にアクションを起こしていくべきだと考えます。
ではではまた次回。
(注1)
前回の記事でも用いた世帯数の推移について、
・64歳未満の単身世帯
・65歳以上の単身世帯
・64歳未満の夫婦のみ世帯
・65歳以上の夫婦のみ世帯
・それ以外の世帯(3世代同居や子供を含む核家族世帯など)
に分類して分析する事にしました。
単身・夫婦のみについては、
高齢者となって
多くが退職した際に、
消費額に大きな影響が出る一方で、
それ以外の世帯=3人以上の世帯については、
世帯内に働いている者がいる場合が多いと考えられ、
年齢で分類する必要がないと考えたものです。
上記の分類に沿って、
総務省の家計調査の2014年のデータに基づき、
1世帯あたりの1ヶ月の消費額
(食料、家具・家事用品、被服、教養娯楽、その他の合計)
を以下の通り算出しました。
・64歳未満の単身世帯
104,452円
・65歳以上の単身世帯
98,912円
・64歳未満の夫婦のみ世帯
197,810円
・65歳以上の夫婦のみ世帯
166,095円
・それ以外の世帯
185,605円
この消費額を各世帯類型の世帯数にかけることで
篠山市内の消費額を算出しました。