よそ者ササヤマンから見た篠山

兵庫県篠山市に生まれたけれど今は住んでいないササヤマンのブログ。篠山について外からの視点でいろいろ書ければと思います。

経団連版街コンは典型的な「仕事やったつもり」

☆見に行っただけ、冊子作っただけ、予算取っただけ、そして、、、

 

先日、木下斉氏が地域活性化の成功事例に対して、

視察ラッシュ、成功事例の調査ラッシュというかたちで、

周囲から多くの「関係者」が群がり、

事業が潰されていくことについて指摘した記事を書いていました。

 

toyokeizai.net

 

 

ササヤマンもこの記事を読んで、

 

 

 

とつぶやいていましたが、

 

これに加えて、

 

 

「海外の制度を「日本版○○」と題するだけで何か出来た気になる」

「外部の制度を「<県の名前>版○○」と題するだけで何か出来た気になる」

 

 

というのも、

やったつもりになりたい人たちが

よくする行動パターンじゃないかなと思います。

 

ほら、こんな感じです。

(明確に「経団連版」とは書いてないけれど、言っているようなもんですね)

 

headlines.yahoo.co.jp

 

 

 

街コンですか。

 

経団連自身は、

 

 男女の出会いが少ないことも大きな要因だとした。自治体などの結婚支援イベントは成果の検証がないと指摘。お見合い世話人に成功報酬を出す仕組みづくりや、商店街など主催の出会いイベント「街コン」を進めていくべきだとした。 

 

と言っていますが、

 

つまりは自治体で今まで行われていた

(あるいは最初に有志で始められた)街コンを

経団連版」街コンとして打ち出したわけですが、

 

当初の有志で始めた「街コン」を

各自治体が「<我がまち版>街コン」としてコピーしていき、

それを「<経団連版>街コン」にしていくとか、

二重コピーのやっつけ感にもほどがあります。

 

経団連として少子化対策を何かしなければ」

「何か施策のタマをだせ」

という議論の中で、

とりあえず出てきたといったところでしょうか。

 

今後予想される流れとして、

・街コンのスキームを検討するチームが立ち上がり、

・各地の街コンの事例をヒアリングし、

有識者を集めた会議を開催し、

経団連版街コンのスキームをなんとなくきれいなパワポにまとめ、

・そのための組織を作り、

・そのPRに多くのお金が投入される。

といったことが考えられますが、

 

ヒアリングしたり、会議したり、組織作ったりと、

動いている感じはがんばって出そうとするのではないかと思います。

 

 

「動いている感じ」を出せればよい方々に取っては、

こういう流れは気が楽でいいのですが、

そのためにまた多くの人が巻き込まれるのは

巻き込まれる側にとってはいい迷惑なんだろうなと思います。

 

どうしてもしたいなら、

一度一人でうんうんうなって案をだいたい考えてから、

提案すればいいのではないかと思います。

 

なんとなく「動いている感じ」を出すために

膨大なエキストラを動員しなくてもいいと思います。

 

 

 

ではではまた次回。

 

 

<補足>

 

ちなみに街コンが今なぜ停滞しているのかということの

分析もあります。

こういうの踏まえて言ってるのならいいんですけれどね。

 

biz-journal.jp

篠山市も地方創生にはコンサル投入ーコンサルではなく、職員の長期的なコミットメントを

最近はどこの市町村も地方創生のため

戦略をつくらなきゃつくらなきゃということで、

コンサルに作業を投げまくっているわけなのですが、

 

 

ササヤマンの生まれ故郷の篠山市はどうかなと思っていたら、

 

篠山市のHPに地方創生に関する

将来の人口ビジョンと戦略の策定のための

調査業務がプロポーザル方式で募集されていました。

 

まち・ひと・しごと創生総合戦略策定支援業務プロポーザルの募集|企画課|篠山市(丹波篠山)

 

 

このように地方創生について

各団体で外部委託がなされるのには

事情もあります。

 

昨年度(2014年度)の

国の補正予算で市町村に交付金という形でお金をばらまいており、

その使途が「地方創生に先行して取り組むため」

ということになっていたんですね。

 

ところが、どこの団体も

これから1年かけて何をするか考えようとしている

地方創生について、

今すぐに先行して何かするアイデアがない

 

以前片山善博さんが

政府のこの種の取り組みでいつも気になるのが、あまりの性急さである。政策を具体化するのは自治体だが、いついつまでに計画を作って提出すべしと国は自治体をことさら急(せ)かすのである。

http://www.nikkei.com/article/DGKKZO82749730T00C15A2KE8000/

 

といってましたが、ほんとそのとおり。

 

急がせすぎ。

 

そこで、どの団体も、

とりあえずは「地方創生のための調査委託」も交付金の使途として

認められているため

一斉にコンサルに委託しています。

 

コンサル任せにすることの弊害は、

木下斉氏が喝破されていますのでそちらをご覧いただきたいのですが、

 

toyokeizai.net

 

ササヤマンとしては、

こんな赤信号みんなで渡れば怖くない」というような発想で、

将来の人口ビジョンや施策をつくってほしくないという思いがあります。

 

 

「専門的な知見がいる」という声もあると思うのですが、

 

そもそも

 

「人口ビジョン作成のために必要なデータの大部分は

国から市町村に既に提供されています」

 

 

データは公表されている統計データですから、

部外者のササヤマンでさえ、

いろいろシミュレーションできてしまうくらいです。

自治体職員ならもっと簡単にシミュレーション可能です。

 

 

sasayaman.hateblo.jp

 

 

さらにいえば、

 

地域経済を分析する

(どの企業が域内のマネーを循環させる企業で、

どの企業が域外からマネーを獲得する企業なのか、など)

ツールも国から提供されます。

 

材料は既に市町村にあり、

市町村職員がその気になれば分析できるのです。

 

もちろん、専門的な調査がいるかもしれません。

でも、そもそもそれを請け負うのは、

目下全国から外部委託の依頼が山ほどあるコンサルですよ。

どこかの市町村でつかったのと同じデータがそのままコピペされそうです。

 

 

大事な事はひとつです。

 

今からつくる戦略は、いきなりパーフェクトなものはできない。

 

今まで何度も日本中で失敗してきた地域活性化というテーマを、

1800団体が一斉に競争して取り組むのだから、

 

むしろ、失敗を織り込むべき。

 

だからこそ、

失敗から学んで、それを反映させていく、

 

PDCAのメカニズムが不可欠

 

お金払って、見栄えのいい計画をとりあえず作ってもらってる場合ではないのです。

 

下手でも何でも、

自分たちがこれから実行し、評価し、修正していく

 

自分たちが作った者として責任を取っていくという姿勢が必要だと思います。

 

大事なのは、作るまでではなく、作る内容でもなく、作った後です。

 

そのためにも、職員そして篠山市の主体的なコミットメントを強く望みます

 

 

ではではまた次回。

天秤にかける価値を考えよう − 篠山市の小学校統合とスクールバス事業の損得勘定

今の仕組みを変えることを恐れるだけではなくて、
何と何を天秤にかけているのかをきちんと考えようというお話。


☆クロスセクターベネフィットを分析しよう


「クロスセクターベネフィット」という言葉があります。


もともとは、ヨーロッパで、

公共交通のバリアフリーを進めれば、
 高齢者が外に出歩くようになり、
 その結果健康の増進による社会保障費の抑制など
 別の部分(異なるセクター)での便益がある」

という主張がなされていたものです。

例えば給食サービスを受けている
高齢者の多くが自分で料理をすることができ、
またその希望も持っているが、

買物に出かけることの物理的な困難さから
サービスを受けている状況が明らかになった。

すなわち、
もし歩道や公共交通手段がバリアフリー化されれば、
年間4,260 万ポンドにのぼる
給食サービスの何割かが削減できる可能性がある。

http://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/pdf/H12_3.pdf



ただ、これはバリアフリーだけに限りません。

「公共交通の維持」にAというコストがかかるとしても、
「公共交通ない場合」に別のBというコストがかかり、

 A<B

であるのなら、公共交通を維持するのが妥当という主張がなされています。


たとえば、
バスがなくなることで、
道路混雑解消のための施策をするとか、
買い物難民のための日用品販売が必要になるとか

そうしたコストと比較するべきであるというものです。

☆公共交通でカバーできる部分を積極的に考えよう


この点、ササヤマンは更に議論を進めます



簡単に言ってしまうと、


公共交通の維持に金がかかるとしても、
施設の統廃合などで浮いたお金のほうが上回るのであれば、
統廃合などを進めるべき
だと考えます。



上のクロスセクターベネフィットの論法に従うのであれば、
学校の統廃合などによりBというコストを削減しようとしているとします。

そうすると住民にとってはサービス低下(学校まで通学できない)が起こります。

これを防ぐために
公共交通をAというコストで新たに始めます。

このとき、
A<Bであるなら、元のサービス(元の場所の学校)を維持するより、
公共交通でカバーするほうが望ましいと考えます。


篠山市の城東小学校のケースで考えてみる


この点、篠山市の城東小学校統合のケースで考えてみたいと思います。


日置、雲部、後川の3つの小学校の
城東小学校への統合された
平成22年度の篠山市の予算では、


小学校統合等スクールバス運行事業として、
約1000万円が追加で投じられる
こととなりました。


つまり、3つの小学校の統合に伴う
公共交通での追加コストは年間1000万円になります。




一方で、
小学校を維持する場合に
行政にかかるコスト
としては、

 小学校の管理費
 小学校の建て替えコスト
減価償却費)
 小学校の人件費

があります。



篠山市のこの3小学校のコストについては
明らかにされていないのですが、

高松市が42の小学校(1分校含む)の維持管理コストとして

約19億円

という分析をしています。



すなわち、

1校あたりの維持管理コストは
約4500万円

という結果になります。



これを篠山市に当てはめてみると、

(A)統合してバスを運用する追加コスト = 約1000万円
(B)統廃合せずに2校を運用するコスト = 約9000万円   (4500万円×2校分)


ということで、

約9倍のコストの差が生じることになります。

☆住民にはメリットもあればデメリットもある

もちろん、
住民(この場合は生徒)からすれば、
移動距離が長くなるという問題はあります。

ためしにササヤマンがグーグルマップ
旧雲部小学校所在の西本庄、
旧後川小学校所在の後川
から
現在の城東小学校までのルート検索を行ってみたところ、
車で15分程度の距離になりました。

したがって、
平均で往復30分程度は移動コストが増加すると考えられます。

※これを多いと考えるか少ないと考えるかは人それぞれです。


一方で、
それぞれの旧小学校のHPによれば、
統合前の児童数は

雲部小学校が33
後川小学校が16

であり、
複式学級であったとしても、
十分なクラス人数の確保が困難だったと考えられます。

クラス人数は多ければいいというものではありませんが、
少なすぎるクラス人数によって、
教育の機会を失っている
部分も大局的にはあると考えます。


☆それでも人口減少フェーズでは考える意義がある


このように、
住民のプラスマイナスを考えると、
必ずしも結論を出すことは難しい部分はあります。

しかし、
人口減少フェーズにおいて
限られたリソースをうまく使う必要があることを考えたとき、

行政のコストで9倍の差があるということは
大きなポイントだと考えます。


以前にも書きましたが、

人口減少と騒ぐ前に、
人口減少によって生じる課題に個別に対応していくべき
です。


こうしたクロスセクターベネフィットを分析し、
公共交通でカバーできる部分については
公共交通でカバーすることで
行政サービスを維持することを真剣に考えるべきです。


ではではまた次回。

10年もすると篠山市内の小売店の多数は撤退-買い物難民対策は大丈夫か

☆世帯数減少、高齢化のダブルパンチで消費は減少

前回の記事で、
人口減少に伴い、世帯数も将来減少するということを書きました。

 

sasayaman.hateblo.jp

 

世帯数の減少は当然その地域での消費活動を減少させます。
それに加えて、高齢者になり、年金生活になってくることでも
消費活動が減少します。

家計調査統計によれば、

いずれも65歳以上の夫婦世帯における
<食料・家具・被服・娯楽・その他>の1か月の支出は、

 16.6万円

であるのに対して、
65歳未満の夫婦世帯では、

 19.7万円

となり、
高齢者になることで消費活動が減少していくことが見て取れます。

☆小売業に対する消費は25%減少


そこで、前回の記事で用いたシミュレーションを再度活用し、
2010年から2035年までの
小売業に対する消費支出を推計してみました。(注1)


f:id:sasayaman:20150411062933p:plain


2010年の値を1として、その後の推移を比率にしてグラフ化してみます。

 

f:id:sasayaman:20150411064409p:plain



このように、
2035年には篠山市民の消費は
25%減少することが見込まれます。

 

言い方を変えれば、

1年間に1%ずつ消費が減少します。

もちろん、
市内の小売業は市外からの観光客からの消費なども取り込んでいますので

小売業の全てにおいてダイレクトに25%の売上減少があるとは限りません。

しかし、食料品などの基礎的な消費については、
あくまで居住している住民の消費が一番ものをいいます。

人口減少と高齢化によって

域内の多くの小売業の売り上げは大きく落ち込むと考えます。

 

損益分岐点突破で、撤退か統廃合か。


TKCが公表している経営指標において、
小売業の黒字企業の平均的な損益分岐点率が示されています。

損益分岐点率とは、何パーセントの売上までなら
 減少しても利益がトントンになるかという目安です。
 たとえば、90%なら今の売り上げが90%になっても大丈夫ということ。

コンビニなら97.1%、
各種食料品なら94.1%
男子服なら92.7%

これらは一例ですが、
どのような業種であっても

25%の売上減少になれば赤字化は避けられないでしょう。

 

仮に1年間1%売上減少のペースとなるのであれば、

10年もすると、多くの小売店の多数が赤字化することになります


そうした流れの中で、
生き残りをかける企業ならば、
経営の合理化に取り組んでいくでしょうし、
そのなかでは店舗の統廃合なども当然選択肢になると思います。


☆小売店の減少を想定した買い物支援を。


小売店の統廃合等があっても、
車で買い物に行けるのであればさほど問題はありません。

しかし、
篠山市はこれからどんどん高齢者が増加していきます。
車に乗れない人も多く出てくるでしょう。

そうした方々の日々の生活、買い物をどのように支援すればよいのでしょうか。

もちろん全国的には民間企業、行政それぞれで取り組みが進められています。

たとえば、
 ①公民館など歩いて行ける場所に買い物拠点を設ける
  「小さな拠点」形成事業

 ②運送会社と自治体・ボランティア等の協働で、

  持続可能な形で無理なく物資を個人に届けるシステムを維持する取り組み

  http://www.mlit.go.jp/common/001086333.pdf


 ③コンビニ側でも配送を手がける動きがあります

  

www.tokyo-np.co.jp



篠山市においては買い物難民問題がより先鋭化した形で生じると見込まれます。

上記のような他のエリアでの取り組みの成果を待つだけでなく、
篠山発で主体的にアクションを起こしていくべきだと考えます。

 


ではではまた次回。

 

 

(注1)

前回の記事でも用いた世帯数の推移について、

・64歳未満の単身世帯

・65歳以上の単身世帯

・64歳未満の夫婦のみ世帯

・65歳以上の夫婦のみ世帯

・それ以外の世帯(3世代同居や子供を含む核家族世帯など)

に分類して分析する事にしました。

 

単身・夫婦のみについては、

高齢者となって

多くが退職した際に、

消費額に大きな影響が出る一方で、

 

それ以外の世帯=3人以上の世帯については、

世帯内に働いている者がいる場合が多いと考えられ、

年齢で分類する必要がないと考えたものです。

 

上記の分類に沿って、

総務省の家計調査の2014年のデータに基づき、

1世帯あたりの1ヶ月の消費額

(食料、家具・家事用品、被服、教養娯楽、その他の合計)

を以下の通り算出しました。

 

・64歳未満の単身世帯

  104,452円

・65歳以上の単身世帯

   98,912円

・64歳未満の夫婦のみ世帯

  197,810円

・65歳以上の夫婦のみ世帯

  166,095円

・それ以外の世帯

  185,605円

 

この消費額を各世帯類型の世帯数にかけることで

篠山市内の消費額を算出しました。

2035年、人口減少で3軒に1軒が空き家になる篠山

☆人口減少だけでなく、世帯の減少も重要

 

これから人口が減少していく篠山で

どんな現象が起こっていくのか

これまで見てきました。

 

sasayaman.hateblo.jp

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でも減るのは人口だけではありません。

生活単位である世帯も減少していくのです。

 

世帯数については都道府県単位で将来の推計がなされていますが、

今回は一定の前提をおいて、篠山市の世帯数も推計してみました。(注1)

 

 

その結果をまとめてみたのが次のグラフです。

 

 

f:id:sasayaman:20150403011424p:plain

 

 

 

高齢者の単身世帯の増加などの影響で

世帯数が増える要因もあるのですが、

それ以上に人口減少が世帯数を減少させます。

 

兵庫県全体で見ると、

2025年までは増加要因の方が強く出ていますが、

篠山市では最初から減少要因の方が強く出ていますね。

 

数値で見ると、

篠山市総世帯数】

  2010年:15,291世帯

 →2035年:11,996世帯

         (△22%)

 

兵庫県総世帯数】

  2010年:2,252,497世帯

 →2035年:2,152,924世帯

          (△5%)

という結果になります。

 

兵庫県全体の人口減少率が△13%

なのに対して、

篠山市の人口減少率が△26%

であることを踏まえても、

 

篠山市での世帯数減少は半端ない勢いで進行します。

 

 

☆空き家が大量発生、さあどうする?

 

「平成25年住宅・土地統計調査」によると、

 

2014年の篠山市の住宅は

17,970戸存在します。

 

2015年の総世帯数(14890)との差は、

 

 17970ー14890

3080

 

つまり、単純計算だと、3080戸が空き家になります

 

この17970戸が

(一切増減せずに)

そのまま毎年維持されていくと仮定すると、

 

2035年には、

空き家の数は約6000戸

全住宅の3分の1が空き家になることになります。(注2)

 

 

この将来にどう対応していくのか、

このあたりの議論はまた時間をおいて書きたいのですが、

 

ここまでの減少になってくると、

今の「地方創生」のなかで議論されている移住促進

というレベルでは対応できない可能性が大です。

 

都市計画、住宅政策、住宅ビジネスや福祉行政など

幅広い手を打っていく必要があります。

 

ちなみに、

この篠山市の世帯数の推計をしていくにあたって

ひとつ「おもしろい発見」をしました。

 

その話もしつつ、世帯数の推計を使って、

次回以降いろいろな議論ができればと思います。

 

 

ではではまた次回。

 

 

(注1)推計方法

 

篠山市の人口と世帯数の関係(世帯主率)を求める。

 平成22年国勢調査人口等基本集計の13−2表、

 『日本の地域別将来推計人口』(平成25(2013)年3月推計)

 

兵庫県の世帯主率との比率(α)を求める。

 『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2014年4月推計)

 

③αが一定になるように、将来の篠山市の世帯主率を設定。

 

④将来の篠山市の世帯主率と将来の篠山市の人口を乗ずる。

 

 

(注2)

2009年の丹波新聞の報道によると、

空き家の戸数は639軒で、 内訳は▽篠山=211▽城東=99▽多紀=91▽西紀=54▽丹南152▽今田=32―。 

 とのことです。

 

住戸数ー総世帯数から導き出した3000軒とは差がだいぶんあるのですが、

以下のような要因が考えられます。

 

・一つの世帯が複数の家を有しているような場合に、空き家とはカウントしていない

・居住していない人間が用いている場合に、空き家とはカウントしていない

・賃貸目的などで一時的に空いている場合に、空き家とはカウントしていない

・(遊休資源の把握という調査の趣旨から)完全に使用が見込めないようなものはそもそも空き家とカウントしていない

 

 

もしも京丹後市方式で全市町村が人口を推計したら

結論

 日本の人口が2060年に2.4億人になる。

 

 

さて、以前に京丹後市の人口推計って

どうなんよという話を書きましたが、

 

sasayaman.hateblo.jp

 

 この京丹後市の人口の見込み方は、

国立社会保障・人口問題研究所(以下社人研)が

公表している基礎データを元に行っており、

 

京丹後市が設定している条件を追加することで、

エクセルなんかで自分で市の推計を再現することが可能です。

 

 

そこで、

同じ方式(注1)で日本全国の市町村が人口を推計したらどうなるのか

を考えてみました。

 

京丹後市方式だと日本全体の人口が2.4億人に

結果は以下の通りです。

 

f:id:sasayaman:20150329224702p:plain

 

日本全体で2.4億人

首都圏は倍増の7千万人超

京都府だけでも今の倍です。

 

ちなみにササヤマンの生まれた兵庫県篠山市でも

同じ方式ですると、

 

現在4.3万人の人口が、

2060年には6.0万人になりました。

 

 

京丹後市のような自治体はまだしも、

人口増加傾向にある首都圏などで

 

「25歳~49歳の人口移動率に

 2020年から5年毎に一律5%向上」

 

なんていう設定をしたら、

まあこんな浮世離れした数値が出てきますよね。

 

☆首都圏は人口を放出すると仮定すると、首都圏の人口は4割減

そこで少し条件を追加してみます。

 

<追加条件その1>

首都圏以外の市町村へ移動(増加)した人口の分だけ、

首都圏の市町村から減少。

 

→これは考えてみれば当たり前の話で、

 日本の人口の総数が変わらないなら

 ゼロサムゲームとして、

 地方が人口増やした分どこかが減るでしょうという話です。

 

 もちろん、限界集落から吸い上げるとか、

 地方の拠点都市から減少するとか、

 いろいろなパターンは考えられますが、

 もともとの「東京一極集中の是正」というコンセプトをいかして

 ここでは首都圏から首都圏以外への人口の移動を想定します。

 

 具体的には、首都圏以外の全市町村で
 京丹後市方式で計算した人口移動率の5%改善分の数値を計算。

 それを首都圏の各都市において

 2010年の人口に基づいて減少させます。

 

<追加条件その2>

京丹後市以上に人口が多い都市については、

人口移動率が青天井にならないようにする。

 

→これも言われてみればその通りで、

 京丹後市レベルの人口で5%ずつ改善が

 百歩譲ってありうるとしても、

 

 100万人規模とかの大きな人口規模の都市において

 同じ%で改善するというのはやり過ぎだろうという話。

 

 そこで、京丹後市の人口の5%の改善について、

 %から絶対数に置き換えた上で、

 同程度の人口の「絶対数の」改善が他の市町村にも起こると仮定します。

 

結果は、、、

 

f:id:sasayaman:20150329231320p:plain

 

首都圏人口は、今の64%にまで落ち込みます。

首都圏以外の人口が2割増になり、

日本全体でも1.3億人と現状以上の人口になります。

 

日本全体でも1.3億人とプラスになっているのは

出生率の設定によるもの(注2)だと思いますが、

このような首都圏と首都圏以外での人口の動きは示唆に富んでいます。

 

本当に「東京一極集中の是正」を目指して

地方に人を呼ぶことは、こういうことを意味します。

 

 

 

大事な事は、

 

日本国内での人口移動はゼロサムゲームだということ。

 

全ての市町村が「誰が競合」で「どういう構造のゲーム」なのかを

わからずに安直に目標設定すると、

日本の人口が倍増するというようなシュールな帰結になるわけです。

 

 

ではではまた次回。

 

(注1)  

出生率については、

京丹後市は過去の自らの最大値である

2.32まで回復する方式をとっていますが、

 

さすがに全市町村の過去の最大値を調べるのは大変なので、

 

 2015年1.3

→2020年1.5

→2025年1.8

→2030年以降2.1

 

という回復があるという前提で試算。

 

 

人口移動率については、

京丹後市方式をそのまま採用。

 

すなわち、

・20歳~24歳の人口移動率に

 2020年から5年毎に一律3%向上

 (2015~2020年までは1.2%向上で試算

 
・25歳~49歳の人口移動率に
 2020年から5年毎に一律5%向上
 (2015~2020年までは2%向上で試算)
 
・50歳~69歳の人口移動率に
 2020年から5年毎に一律1%向上
 
・90歳以上の生残率を
 2020年から5年毎に一律1%向上
 
(注2)
今回のシミュレーションでは
全ての自治体が

 2015年1.3

→2020年1.5

→2025年1.8

→2030年以降2.1

という出生率になる事を前提としましたが、

 

当然、これは平均値であるべきもの。

 

国が平均値が上記の値となりつつ、

各市町村がそれと同じ伸び率になった場合には、

日本の人口は2060年に1億人程度になると推計しているので、

1.3億人という推計は3割引くらいする必要があります。

2040年には篠山市の税収は5億円減少?

☆市民税は人口に連動する

 

前回の記事で

「人口が減って何が困るか具体的にイメージしよう」

いうことで小学校の児童数を取り上げました。

 

sasayaman.hateblo.jp

 

今回は、自治体という観点から、

税収の話を書きます。

 

篠山市の統計情報によると、

篠山市の2013年度の

税収約56億円の内訳はこんな感じです。

 

f:id:sasayaman:20150325030832p:plain

 

このうち赤字の部分、

個人に対してかかる市民税は全体の約3割を占めています。

 

国の所得税は収入が上がれば

税率もどんどん上がっていきますが、

この市民税は税率は一定です。

 

したがって、

仮に高所得、低所得それぞれの住民が

同じ割合で減っていくとすると、

この市民税もそれに比例して減少していくことになります。

 

社会保障・人口問題研究所による篠山市の将来人口推計では、

篠山市の15歳〜64歳人口は、

 2015年: 23,747人

 2025年: 20,892人

 2040年: 17,408人

とされています。

 

この変化の割合と同じように市民税も推移するとすると、

市民税(均等割+所得割)は、

 2015年: 1,866,948千円

 

 2025年: 1,554,571千円

        (△212,440千円)

 

 2040年: 1,295,327千円

        (△471,684千円)

と見込まれます。

 

景気変動などに関わらず、人口減少の要因だけで、

2040年には5億円

これから10年後には2億円の税収が減少することになります。

 

篠山市は人口減少による税収減を見込んでいる!?

 

篠山市財政再建のために「篠山再生計画」を策定しており、

最新の2014年度版の収支見通しでは、

2019年には収支のバランスを見込んでいます。

 

計画に記載されている税収の見込みを見る限り、

現在56億円の税収が

2023年度に48億円になると推計するなど、

人口減少も織り込んだ厳しめの見込みをしているようです。

 

よそ者ササヤマンとしては、

人口減少による税収減を篠山市が見込んでいて、

とてもほっとしています。

(というか見込んでいない自治体があまりに多いと思いますが。。。)

 

ということは、

少なくとも税収の観点からは

篠山再生計画を忠実に実行するのであれば、

人口減少について大騒ぎするという事にはならないわけです。

 

前回の小学校の件でもそうですが、

こうやって人口減少についてひとつひとつ対応できているか、

その観点でチェックする事が、

人口減少問題にきっちりと向き合うということになると思います。

 

ではではまた次回。

 

 

※追記 2015.4.1


上記のシミュレーションにおいては、
社会保障・人口問題研究所の推計を使用していますが、

そのなかでも
「封鎖人口」=人口移動がない前提のシミュレーションを使っていました。

人口移動がある前提のシミュレーションを使うと
もっと篠山の人口見込みは厳しくなります。

 

2040年:29,852人 (人口移動あり)
      32,803人 (人口移動なし)

 

したがって、上記のシミュレーションよりも
実際には厳しい推移になると予想されます。


今後の見込みについては、人口移動ありのものを前提に行います。